渋谷トレンドリサーチが発表した2026年夏の「高校生最新トレンドランキング」で、コトバ部門の1位に「めろい」、2位に「わほー」、3位に「滅」がランクインした。全15項目・TOP10形式で毎シーズン発表されているこの調査は、女子高生を中心に読まれてきたが、今回はSNS上で「意味が全く分からない」「もう何も理解できない」という大人世代の投稿が相次ぎ、ランキング自体が思わぬ形で拡散する事態になっている。
「めろい」「わほー」「滅」の意味
「めろい」は、もともと「メロメロになる」を語源とするネットスラングで、推しのビジュアルを称賛する言葉として広まった。現在はビジュアルに限らず、行動や雰囲気、内面全般をほめる言葉として定着している。「わほー」は、YouTuberのSEIKINが2014年に公開した動画内で発した掛け声が元ネタで、当時は衝撃や寒さへの驚きを表す言葉だった。それが巡り巡って2026年の高校生の間でリバイバルし、「テンションが上がる」「嬉しい」を表す日常の掛け声として大ヒットしている。「滅」は、5人組ダンスボーカルグループ・M!LKの楽曲『好きすぎて滅!』から派生したフレーズで、「好きすぎてどうにかなりそう」という感情を一語で表す言葉として使われている。
親世代の反応
X(旧Twitter)では、子を持つ親世代のアカウントを中心に「娘の会話が暗号にしか聞こえない」「わほーって何のリアクションなんだ」といった投稿が広がった一方、当の高校生たちからは「そんなに驚かれると逆に恥ずかしい」という反応も見られ、世代間のちょっとした温度差がそのままネタとして消費されている状況だ。
調査の内容と範囲
渋谷トレンドリサーチは、コトバ部門だけでなくグルメ、コスメ、音楽、ファッションなど全15項目にわたって高校生の”今”を毎シーズン調査しているリサーチ企画で、PR TIMES経由で結果を発表するたびにSNSやまとめサイトで話題になる定番企画になっている。今回の「2026年夏の特大号」でも、コトバ部門以外にランクインした項目まで含めて、Z世代のトレンドを知りたい企業のマーケティング担当者や、教育関係者からの注目度が高かったという。
ランキング発表後、まとめサイトやニュースアプリのコメント欄には「うちの学校でも普通に使われている」という高校生本人からの反応と、「もう若者言葉についていけない」という30代以上からの反応が入り混じり、コメント数自体もいつものコトバ部門の発表より伸びる結果となった。学校の先生からは「生徒同士の会話で頻出するので、意味を知らないと会話に置いていかれる」という声も上がっているといい、職員室でも話のネタになっているそうだ。
なお今回の調査は、渋谷を中心とした都市部の高校生を対象に実施されたもので、地方によって流行語の広がり方や浸透速度には差があるとみられる。それでも今はSNSを通じて情報が瞬時に共有される時代であり、渋谷発の流行語が数週間のうちに全国の高校のグループチャットへ広がっていく様子は珍しくないという。同様の現象は音楽やダンス、ファッションの分野でも起きており、一度は姿を消したはずのコンテンツが短尺動画の波に乗って思わぬタイミングで再評価されるケースは、この数年で目に見えて増えている。今回とくに話題を呼んだのは、1位と2位の言葉が対照的な生まれ方をしている点だ。「めろい」は現代のSNS文化の中で自然発生的に生まれた比較的新しい言葉である一方、「わほー」は10年以上前の動画コンテンツが再発掘されてリバイバルヒットしたケースであり、流行の生まれ方そのものが多様化していることが、この2語の並びからもよく分かる。過去の動画資産が短尺動画のクリップとして繰り返し再利用され、投稿から10年以上経ってから思わぬ形で日の目を見るという流れは、動画プラットフォームが十分に成熟した今の時代だからこそ起きる現象だと言えそうだ。
他の調査との比較
興味深いのは、同じ時期に発表された別の調査「JC・JK流行語大賞2026上半期」(AMF調べ、女子中高生1000人対象)では、コトバ部門1位が「わほー」だった点だ。渋谷トレンドリサーチでは1位だった「めろい」と3位の「滅(好きすぎて滅)」は、こちらの調査ではノミネート50語入りにとどまり、部門トップには入っていない。同じ夏、同じ世代を対象にした調査でありながら、上位の顔ぶれが微妙にずれているのは、調査対象の年齢層や母数、実施時期のわずかなズレが影響しているとみられる。1つのランキングだけを鵜呑みにせず、複数の調査を見比べる楽しみ方をしているファンも一定数いるようだ。
こうした言葉が生まれてから全国区になるまでのスピードは、年々加速している。TikTokやInstagramのリールといった短尺動画プラットフォームでは、特定のフレーズや掛け声が動画のBGM的な合いの手として繰り返し使われることで、意味を知らないまま真似する視聴者が増え、数週間単位で全国の学校に広がっていく。SEIKINの「わほー」が発表から12年近い時を経て高校生の間で急浮上したように、過去の動画やフレーズが短尺動画のクリップとして再発見され、当時を知らない世代の間で新しい意味を持って再流行する現象も珍しくなくなった。
言語学から見た共通点
言語学的に見ても、これらの言葉には共通点がある。「めろい」も「滅」も、感情の強さを一語で圧縮して伝える機能を持っている点だ。長い説明文を打つより、決められた一語のスタンプを送り合う方がテンポよくやり取りできるため、SNSでの短文コミュニケーションと非常に相性がいい。友人同士のグループチャットでは、文章そのものよりも、こうした一語のリアクションを連投することで会話のテンポを作っているケースも多いという。
過去のランキングを振り返ると、こうした「感情圧縮型」の言葉は毎年のように新しいものが生まれては消えていく。数年前には「ぴえん」や「あーね」といった言葉が同じように全国区の流行語となり、当時も同様に親世代を戸惑わせた経緯がある。今回の「めろい」「わほー」「滅」も、いずれこの系譜に連なる一時代の記録として語られることになりそうだ。
学校と家庭での受け止め方
学校現場からは別の角度の反応も出ている。国語の授業で流行語を教材として取り上げ、なぜその言葉が支持されるのかを生徒自身に考えさせる取り組みを行っている教員もいるという。単に「意味が分からない」と切り捨てず、言葉の成り立ちや拡散のメカニズムを教育の題材として活用する動きも、SNS時代ならではの現象だと言えるだろう。
保護者の間でも受け止め方は分かれている。子どもの語彙の変化を成長の一部として面白がる親がいる一方、正しい日本語が使えなくなるのではという懸念を口にする声も根強い。ただし国語教育の専門家の間では、こうした流行語の多くは友人同士の会話やSNSに限定して使われる「場に応じた言葉」であり、作文や面接など公的な場面での言葉遣いとはきちんと使い分けられている生徒がほとんどだという見方も示されている。言葉の乱れを心配する前に、TPOに応じた語彙の引き出しが一つ増えているだけだと捉える専門家も少なくない。実際、こうした流行語を使いこなす生徒ほど、場面によって言葉を器用に切り替えている様子がうかがえるという指摘もあり、友人との会話と、先生や保護者との会話とで、無意識のうちに言葉のスイッチを切り替えているケースも多いようだ。
流行語の賞味期限
こうした流行語には、当然ながら賞味期限がある。過去の調査を振り返っても、シーズンごとにランキングの顔ぶれはほぼ総入れ替えになっており、「めろい」「わほー」「滅」も、半年後には別の言葉に取って代わられている可能性が高い。実際、渋谷トレンドリサーチも「全15項目」として毎シーズン発表を続けており、コトバ部門以外にもグルメやコスメ、音楽など幅広いジャンルでランキングが動いている。次の調査でどんな言葉が入れ替わって出てくるかも、SNS上ではすでに気の早い予想合戦が始まっているようだ。
一方で、企業のマーケティング担当者にとっては、こうした調査結果は無視できない情報源になっている。高校生の間で自然発生した言葉を広告コピーに無理に取り入れると「大人が媚びている」と一気に冷めた反応をされるリスクがあるため、言葉そのものを真似るよりも、なぜその言葉が支持されているのかという背景を理解することの方が重要だとされている。
過去には、企業アカウントが流行語をそのままキャンペーンコピーへ転用し、逆に「痛い」「無理して合わせている」と拡散されてしまった例も少なくない。若者言葉を扱う際に大切なのは、言葉の表面をなぞることではない。その言葉が生まれた文脈や、なぜ今の高校生に刺さっているのかという構造を理解したうえで発信する姿勢が求められている。専門のリサーチ会社が毎シーズンこうした調査を継続的に行っている背景にも、企業側のこうした需要がある。実際、渋谷トレンドリサーチのような調査結果は、広告代理店やSNS運用担当者の間で「若者の温度感を測る定点観測」として社内共有されることも珍しくないという。こうした定点観測を継続的に眺めることで、次にどんな価値観のシフトが起きているのかを早めに察知したいという、実務的な狙いもあるようだ。
自分の子どもや部下、後輩世代の言葉が理解できずに戸惑った経験がある人には、Z世代の価値観やコミュニケーションの特徴を体系的に解説した書籍が参考になる。世代間のギャップを「謎の暗号」で終わらせず、背景にある価値観の変化として捉え直すことで、日々の会話も少し楽になるかもしれない。AmazonでZ世代・若者言葉に関する書籍を見る
流行の移り変わりをリアルタイムで追いかけたい人には、最新の若者トレンドをまとめたムック本やカルチャー誌も毎シーズン発売されている。掲載されている言葉の中には発売時点ですでに下火になっているものもあるが、どんな理由でその言葉が支持されたのかという背景まで解説してくれる媒体を選ぶと、単なる用語集以上の学びが得られる。次にどんな言葉が高校生の間で広まるのか、気になった人は手に取ってみるのもいいだろう。半年後、1年後に読み返したときに「懐かしい」と思えるかどうかの答え合わせも、こうしたトレンド追いかけの楽しみ方の一つだと言えるだろう。Amazonで最新トレンド関連ムックを見る
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