2026年の台風が、記録的な速さで数を増やしている。日本気象協会が8月24日に公表した見立てによると、この時点で発生した台風はすでに21個に達した。8月の段階で21個まで積み上がるのは平成以降(1989年〜)では2018年以来、8年ぶりの多さだという。平年と比べると、およそ1.5倍のペースで発生している計算になる。
過去の記録をさかのぼると、年間39個という最多を記録した1967年は、8月までに22個が発生していた。2026年はその1967年に次ぐ勢いで台風が生まれており、統計のうえでも際立った年になりつつある。夏本番のうちにこれだけの数がそろうと、この先の秋に向けてさらに積み上がる余地も残る。
数が多いだけなら「今年はよく降るな」で済む話かもしれない。ただ、今年の台風には数以上に注意したい特徴がある。ひとつは接近数の多さだ。気象協会は8月時点で、日本に接近する台風を3〜6個と予想していた。太平洋高気圧の張り出し方しだいでは、沖縄・奄美だけでなく西日本から北日本まで、広い範囲が雨や風の影響を受ける可能性がある。
もうひとつは、一つひとつの台風が持つ勢力だ。今年は春からエルニーニョ現象が続いているとみられ、この現象が発生している年の台風には、遠くの海でじっくり時間をかけて発達し、勢力を落とさないまま日本へ近づいてくる傾向がある。数が多く、しかも強い。2026年の台風シーズンは、その両方を同時に警戒すべき年になっている。
例年、台風のピークは8月から9月にかけてやってくる。今年はその入り口の時点で、すでに平年のシーズン後半に匹敵する数がそろってしまった。8月下旬までに21個という数字は、単に「今年は多いね」で片づけられる範囲を超えている。気象の専門家がわざわざ注意を呼びかけているのは、この先の秋にさらに数が伸び、しかも一つひとつが強くなる兆しがあるからだ。まだ大きな被害が出ていない今のうちに、状況を正しくつかんでおくことに意味がある。
まずは「今、何が起きているのか」を事実として押さえておきたい。ここまでの台風発生ペースを平年と並べると、その異常さが見えてくる。
| 項目 | 2026年(8月24日時点) | 平年・過去との比較 |
|---|---|---|
| 発生した台風の数 | 21個 | 平年のおよそ1.5倍のペース |
| 平成以降での位置づけ | 8年ぶりの多さ | 前回は2018年 |
| 過去の最多年との比較 | 1967年(8月まで22個)に次ぐ | 1967年は年間39個 |
| 8月時点の日本接近予想 | 3〜6個 | 高気圧しだいで広範囲 |
なぜ今年はこんなに多いのか エルニーニョが変えた台風の「育ち方」
台風の数がここまで増えた背景には、海の状態がある。今年は春先からエルニーニョ現象が続いているとみられている。太平洋の赤道付近、日付変更線あたりから南米ペルー沖にかけての海面水温が、平年より高い状態だ。この海の温度差が、台風の生まれる場所と育ち方を変えている。
エルニーニョが起きている年は、台風の発生位置が平常時よりも南東側へずれる傾向がある。つまり、日本から遠く離れた海の上で台風が生まれやすくなる。遠くで発生すると聞くと安心しそうになるが、話はそう単純にいかない。生まれた台風は、暖かい海の上を長い距離かけて進むことになる。台風は海から水蒸気というエネルギーを受け取って発達するため、暖かい海を長く旅するほど、勢力を蓄えながら成長していく。
日本気象協会の藤川徹気象予報士は、8月24日の解説でこう指摘している。今年の台風は「遠方でじわじわと発達し、勢力があまり衰えないまま接近してくる可能性がある」。遠い海で生まれ、時間をかけて力を蓄え、強いまま近づいてくる。今年の台風が持つ危うさは、この育ち方に集約されている。
しかも、時期が悪い。9月ごろは、日本の近海で海面水温が1年のうち最も高くなる時期にあたる。本来なら夏を越えて衰えるはずの台風が、日本のすぐそばまで来ても高い水温に支えられ、勢力を保ったままになりやすい。9月に入ってからの台風ほど、上陸直前まで強い勢力を維持したまま突っ込んでくるおそれがある。
「発達したまま接近する」という言い回しは、天気予報でよく耳にする割に、実感がわきにくいかもしれない。もう少しかみ砕くと、これは中心付近の風がそれだけ強い状態で上陸するという意味になる。勢力の衰えた台風なら、上陸するころには風も雨も弱まっていることが多い。ところが今年の秋のように、暖かい海に支えられて力を保ったまま近づく台風は、上陸の瞬間まで強い風が吹き荒れる。屋根や看板が飛び、街路樹が倒れ、送電線が切れて広い範囲が停電する。海が荒れれば高潮も加わる。同じ「台風接近」でも、弱った台風と発達した台風では、暮らしへの打撃がまるで違ってくる。
過去を振り返っても、9月から10月にかけて上陸した台風が大きな爪痕を残した例は少なくない。強い勢力を保ったまま都市部を通過すれば、停電が数日続き、鉄道が長時間止まり、物流も滞る。都市で暮らしていても、電気と水が止まる事態は決して他人事ではない。今年はその条件がそろいやすい年だという点を、頭の片隅に置いておきたい。
こうした見通しは、SNSでも受け止められ始めている。「まだ8月なのに台風の話ばかり」「今年はやけに雨が続く」といった声に加え、「9月の連休あたりが心配」「停電に備えて何か用意しないと」という、備えを意識した投稿も目立つ。夏のあいだに台風のニュースを繰り返し見てきたことで、秋の大型台風を前もって身構える空気が、例年より早く広がっている。
背景をまとめると、今年の台風リスクは3つの条件が重なって生まれている。数、勢力、そして時期だ。
| 要因 | 今年の状況 | 引き起こされること |
|---|---|---|
| エルニーニョ現象 | 春から継続、海面水温が高い | 台風が遠方で発生し、長く発達しながら接近 |
| 発生ペース | 平年の約1.5倍 | 一つ去ってもすぐ次が来る過密な状況 |
| 9月の海面水温 | 1年で最も高い時期 | 秋の台風が勢力を保ったまま接近・上陸 |
秋の直撃に、今からできる備え 停電・断水を想定した持ち物
ここまでの流れを整理すると、2026年の秋は、発達した台風が勢力を保ったまま近づいてくる年になりそうだ。夏のうちにこれだけ台風が続いた以上、9月から10月にかけても油断はできない。大事なのは、静かな今のうちに手元をそろえておくことだ。接近予報が出てから慌てて買いに走っても、そのときには店頭からモバイルバッテリーや水がまず消える。品切れになってからでは間に合わない。
台風の備えは、一度そろえてしまえば数年は使える。年に何度も台風が来る今年のような当たり年なら、シーズンの入り口で準備しておく価値はさらに高まる。ふだんはクローゼットにしまっておき、進路予報が出たら玄関近くに移す。この置き場所の切り替えを家族で決めておくだけでも、いざというときの動きが変わる。
強い台風で最初に困るのは、たいてい電気と水だ。停電すればスマホの充電が切れ、情報も連絡手段も断たれる。断水すればトイレも飲み水も止まる。エレベーターが止まった高層階では、水の運搬だけで一苦労になる。だからこそ、備えは「電源」「明かり」「水と食料」「情報」の4つを軸に考えると漏れがない。以下のチェックリストを、自宅の状況に当てはめて眺めてみてほしい。
| 備えの軸 | 用意しておきたいもの | ねらい |
|---|---|---|
| 電源 | モバイルバッテリー、ポータブル電源 | スマホ・照明・小型家電の停電対策 |
| 明かり | LEDランタン、ヘッドライト、乾電池 | 夜間の停電時に手元と足元を確保 |
| 水・食料 | 保存水(1人1日3L×3日分)、長期保存食 | 断水と物流停止に3日耐える |
| 情報・衛生 | 手回しラジオ、簡易トイレ、救急セット | 通信途絶と断水下の生活を回す |
このなかでも、まず一つだけ用意するならモバイルバッテリーとポータブル電源をすすめたい。停電時にスマホが使えるかどうかで、避難情報の受け取りも家族との連絡も変わってくる。容量の大きいポータブル電源があれば、扇風機やちょっとした調理器具まで動かせる。防災用品は普段使いもできるものが多く、買っておいて損はしにくい。
Amazonで手に入る主な備えは、以下のカテゴリからそろえられる。台風接近の報道が増える前の、在庫が潤沢な今のうちに確認しておくと安心だ。
住まいの形によって、優先したい備えは少し変わってくる。マンションの高層階なら、停電でエレベーターと給水ポンプが同時に止まる事態を想定したい。断水すれば階段で水を運ぶことになるため、飲み水に加えてトイレ用の生活用水を多めに確保しておくと安心だ。戸建てなら、強風で飛んできた物による窓ガラスの割れや、庭の物置・自転車の倒壊にも気を配りたい。窓には養生テープを、屋外の軽い物は事前に室内へ。どちらの住まいでも、家族が別々の場所にいるときの連絡手段と集合場所を、あらかじめ決めておくと動きが早い。
備えというと身構えてしまいがちだが、最初の一歩は難しくない。スマホを2回フル充電できる容量のバッテリーと、3日分の水。この2つを玄関のそばに置くところから始めれば十分だ。そこに明かりと非常食を少しずつ足していけば、秋の台風シーズンに向けた最低限の守りが整う。
2026年の台風シーズンは、数の多さと勢力の強さが同時にそろった、身構えておくべき年になっている。8月で21個という発生ペースは、すでに平年の域を超えた。エルニーニョに後押しされた秋の台風が、勢力を保ったまま日本へ向かう場面は十分に起こりうる。天気予報で進路を追うことと並行して、電源と水の備えを一度見直しておく。この一手間が、いざというときの安心につながる。進路がそれて何事もなく終われば、それはそれでいい。用意した水もバッテリーも、来年の夏へそのまま持ち越せる。備えて損をすることはない年だと考えて、動ける今のうちに手を打っておきたい。台風のニュースが増えるこの時期こそ、家族と一緒に備えを見直す、またとない良いきっかけになるはずだ。
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